音象徴について (1999.1.一般言語学コース卒業にあたり卒業論文として作成・脳電位図データについては掲載省略)
)序論より: 言葉はどこから生まれたのだろう。言葉を持たない動物を見ていると、人間もはるか以前はこうやって意思疎通をしていたのかと思うことがある。犬が大きな声で「ワンワン」とほえて不審者の進入を知らせたり、「クーンクーン」と飼い主に甘えて見せたりする。人間の言語のはじまりも、同じようなものだったのではないだろうか。人間もはじめは「言葉」というよりは「音」といったほうがいいようなもので意思疎通をしていたのだろう。そしてその「音」が生活集団の中で共通の意味を担うようになり、音の組み合わせによって複雑な内容もあらわすことができるようになり、発展して「言葉」になっていったのだろうと私は考える。そして長い年月がたった今も、言葉がまだ音とあまり変わらなかったころの痕跡を残すように「音象徴」があるのだと思う。
音象徴の存在は多くの人が直感的に感じられると思う。今回の実験のためのアンケートでも、
[a]、[i]、[u]と大、中、小の意味とを結びつけることに抵抗を示した人はいなかった。しかし、その「直感」を説明することは難しい。そのためにSapir(1928)Atzet(1963)ほかいろいろの実験が行われ、報告されているもののまだまだ不十分である。私は脳内に発生する事象関連電位を使って、この音象徴の分野に切り込んでみようと思った。事象関連電位の解析は方法論が未熟であり、技術的にもまだまだ向上の余地のある分野だが、音象徴のほか語用論、心理言語学など言語学にはこれから多大な貢献をすると思う。私のこのささやかな実験が、役に立つことを願う。
音象徴とは: 言語は恣意的な音声記号の体系である。音声とその指示物の間には直接的な因果関係がない。
たとえば、「犬」という世界中であまり変わりのない概念をさすにしても、日本語では「イヌ」、英語では
"dog"、フランス語では"chien"とばらばらであるのは、それぞれが各言語で恣意的につくられた音声記号だからである。しかし言語の恣意性には程度差があり、たとえばオノマトぺなどはほかの語に比べて恣意性が低く、指示物との因果関係を強く持つように感じられる。オノマトぺなどに見られる音声と指示物との因果関係を音象徴と呼ぶ。この「象徴
(symbol)」は恣意的な「記号(sign)」と対立して用いられている概念である。音象徴はいくつかに分類できるが、ここでは本実験とかかわりの深い「共感覚的音象徴」について
L.Hinton,J.Nichols,J.Ohala(1994)による"Introduction:sound symbolic process"にそって述べる。共感覚的
(synesthetic)音象徴:オノマトぺとちがい、実際には音のない現象、状態を(感覚を媒介として)音で示す機能である。たとえば物体の大きさ、形状といったものをあらわす。例としては口蓋子音と狭母音で構成される音節は小さいものをあらわし、低い声で母音を伸ばすように発音すると大きいものをあらわす
("I't was a bi-i-ig fish!")等といった報告が英語の例でなされているが、定かではない。このほか発音の持続時間、上昇や下降、聞こえの大きさ、繰り返しのあるなしなどが音象徴の役割を果たしているのではないかと見られている。しかし、ある言語においてある音のパターンと一定の意味のつながりが主張されても、同じ言語内や他言語で容易に反例が見つけ出されることが多い。この機能は研究者の恣意に左右される事が多いようである。共感覚的音象徴には特定の型の音が特定の意味とつながっていることがある。たとえば閉鎖子音が突然の現象を、持続子音が持続する現象を、ふるえ音がすばやく空を切るような動きを、鼻音が反響や何かの鳴る音を表すといったつながりである。
これらの現象をまとめて
"Frequency Code"というものが作られている。(J.Ohala 1984)その概要は以下のとおりである。トーンの高い音、第
2フォルマントの高い母音(代表は/i/)、高周波の子音は高周波の音、小さいもの、鋭いもの、すばやい動きを表す。トーンの低い音、第
2フォルマントの低い母音(代表は/u/)、低周波の子音は低周波の音、大きなもの、柔らかさ、鈍重な動きを表す。この
"Frequency Code"には賛否両論あり、言語によってこれに添うものと沿わないもの、まったく逆になるものなどがある。
先行研究の分析:
本実験は
Sapir(1928)に大きな影響を受けている。簡単にこれを紹介する。Sapirは音象徴のうち共感覚的音象徴に分類される種類の音と大きさのイメージの関係について実験を行った。刺激音は100組を用意し、被験者はUniversity of Chicago High School の生徒を中心とする500名である。
/a/
と/i/の組み合わせの刺激音において/a/の方が「大きい」と答えた被験者の割合(%)音
NO.被験者数 6 30 86 94 124 81 33 10 21 8 7年零
11 12 13 14 15 16 17 18 Univ. Adlt. Chin.1 83.3 86.7 90.6 92.3 83.1 84.0 78.8 80.0 85.0 100 100
41 100 70.0 82.7 78.0 76.4 71.6 69.7 50.0 95.2 100 85.7
81 83.3 93.3 74.7 72.2 81.8 80.0 77.4 100 70.0 85.7 85.7
87 83.3 83.3 84.1 86.0 91.8 86.1 72.7 80.0 90.0 100 42.9
平均
87.5 83.3 83.0 82.1 83.3 80.4 74.6 77.5 85.0 96.4 78.6
Sapir
は次のように分析している。平均では
/a/が「大きい」と答えた被験者の割合は約75%から96%である。一番大きな被験者集団である124人、15歳の被験者群においては平均83%であり、一番小さい被験者群6人、11歳の被験者群においては87.5%である。ここから、個人差にかかわりなく、特に英語母語話者にとっては/a/が/i/と比べて「おおきい」イメージがあるということがわかる。そして少なくとも
11歳以上の人間に関しては、年零は回答に影響しないこと、また大人の被験者は高校の英語の教師であるのだが、これも他の被験者群と変わりないことから言語に関する教養の多寡も影響ないことがわかる。被験者数は少ないものの中国語母語話者の回答も英語母語話者と同じ傾向である。被験者の母語・言語環境と音象徴の関係についてはより詳しい実験が必要であるとおもわれる。
私はこの
Sapirの報告を読んで次のように考えた。大きい、小さいといった単純な事象に関しては、少なくとも英語母語話者には音と意味に一定の結びつきがあることがわかる。
この実験において被験者の一部に中国人がおり、彼らがどのくらい長くアメリカで暮らしているかなどについては記述がないためわからないが、
Sapirはこの中国人の回答についても、英語母語話者らと同じ傾向があるとしている。しかし私はこれに疑問を感じる。同じ傾向の回答をしているものもあるが、刺激音NO.87のように他の被験者群と著しく違う結果も出ている。これはやはり、母語が違えば音に対するイメージも違うということなのではないだろうか。大体、実在の語彙の影響はあまりないと
Sapirは繰り返しいっているが、それにしても中国語に囲まれて育った人間と英語に囲まれて育った人間とで音に対するイメージが同じになるとは私には思えないのである。本研究で日本語母語話者のほか韓国語、中国語母語話者なども被験者としているのは母語の違いとの関連を見るためでもある。
音象徴に関して実験的手法を取って検討しているものにはほかにもいくつかの報告があるが、賛否は分かれている。大まかにいって共感覚的音象徴肯定の報告をしているものが
Newman(1933)、Tarte&Barritt(1971)、Tsuru&Fries(1933)、否定的な報告をしているものが Atzet(1963)、Slobin(1967)である。音象徴に関する実験は多く行われているものの現在のところ一定した見解は出ていないといえよう。
脳電位について:
本研究では脳電図(
EEG)を用い、刺激音によって発生する事象関連電位(ERP;event-related potentials)と呼ばれる、脳の高次機能を反映するとされる電位の分析を行った。脳電位の発生のメカニズム:脳内の神経組織のうち神経細胞(図
1)が脳電位の発生に関係している。神経細胞は尖頂樹状突起の部分でほかの神経細胞と連結しているが、その連結部はシナプスと呼ばれ、シナプスには100Å(1Å=1000万分の1mm)程度の狭い隙間「シナプス間隙」がある。(図2)このシナプス間隙を神経伝達物質が移動することで情報の伝達が行われる。安静時には図3に示すように細胞膜の内側が陰性、外側が陽性に帯電している。ここに、シナプスを介して興奮性の信号が入力されると、瞬間的に細胞内の陰性電位が減少し、相対的に内側が陽性、外側が陰性と電位が逆転する。抑制性の信号が入力されるとちょうど逆の現象になり、細胞内の陰性電位が増加する。電流は陰性部分から陽性部分の方向へ流れるので、興奮性の信号が入力されるときは安静時と逆方向の電流が流れ、抑制性の信号が入力されたときは安静時と同方向により大きな電流が流れることになる。
この電流の流れにおいて測定される電位が誘発電位と呼ばれるものである。
脳電位データの読み方
ここで後の実験結果に添付されている
EPYLIZERの読み方について簡単に解説する。波形の中央部を横断する横線が基線である。この基線より上に出ている極性が陰性波(negative polarity;N)であり、下に出ている極性が陽性波(positive polarity;P)である。一般的には、最初に
N1と呼ばれる陽性波が40-70ms付近に出現した後、陰性波と陽性波が交互にあらわれる。P1の後にはN1(刺激提示呉初めて現れた陰性波の意)が生じ、ついでP2(刺激提示後初めて現れた陽性波の意)といったように現れる。一般的には刺激音が入力された後に立ち上がる
ERP成分としてのピーク潜時は次の範囲であるといわれている。P1:40-70ms P2:170-260ms P3:250-500ms
N1:90-150ms N2:250-300ms
しかし本実験の結果を見るとこの範囲から外れるものが多く、実験の種類、環境などによって大きく左右されるもののようである。
実験
対象とする言語音は言語による音韻構造の違いを捨象するため母音に限り、またもっとも普遍性が高いとおもわれる次の
3母音とした。すなわち
[a] 前舌広母音非円唇),[i](前舌狭母音非円唇),[u](後舌狭母音円唇)である。この3母音に関する実験として以下の3種類の実験を行った。卒業論文に挙げた全データをここで挙げるには時間がないので、
3
種類行った実験から一件ずつ挙げる。実験
1:[a],[i],[u]をそれぞれ一種類ずつ提示。[a],[i],[u]それぞれの刺激下のERPを観察する。被験者は宇都木1人である。(解析画面1)被験者のデータ
名前:宇津木
年齢:2
1性別:男
利き手:右
言語形成期(
5〜13歳)に住んだ場所:東京都文京区(日本)母語:日本語
実験日:
1998.5.12N
1は潜時の短い順に[a]<[i]<[u]となっており、これは城生(1998)と一致した結果となっている。またN1の振幅は[a]>[i]>[u]である。P
2は潜時の短い順に[a]<[i]<[u]であり、振幅はチャンネルによって異なるところもあるが大まかに言うと[u]>[a]>[i]である。これが一般的な傾向であるかは不明だが、
[a][i][u]のN1,P2に潜時、振幅の違いがあることが確認されたといえる。
実験
2[a],[i],[u]にそれぞれ高低、低高のプロソディーをつけ高低を10、低高を01とあらわす。a01.a10.i01.i10.u01.u10をそれぞれ一種類ずつ提示、a10.i10.u10(高低)とa01.i01.u01(低高)の各組のERPを観察する。
名前:崔
(choi) 東燮年齢:
25性別:男
利き手:右
言語形成期に住んだ場所:ソウル(大韓民国)
母語:韓国語
大
:/u/ 中:/i/ 小:/a/実験日:
1998.6.4(10:00-10:30)名前:林
年齢:
18性別:女
利き手:右
言語形成期に住んだ場所:長崎県深堀町(日本)
母語:日本語
大
:/a/ 中:/i/ 小:/u/実験日:
1998.6.3(13:30−14:30)名前:
Gan Seow Ying年齢:
26性別:女
利き手:右
言語形成期に住んだ場所:マレーシア
母語:福建語
(その他北京語、マレー語、英語を生活では用いる。日本語も非常に流暢。
本人は北京語が最も使いやすいと答えた)
大
:/a/ 中:/i/ 小:/u/実験日:
1998.6.10 (14:00-15:00)
名前:岩井
年齢:
21性別:男
利き手:右
言語形成期に住んだ場所:富山県射水郡小杉町(日本)
母語:日本語
大
:/a/ 中:/u/ 小:/i/実験日:
1998.5.29 (14:00-15:00)(解析画面
2参照)|
N1 の潜時順 |
P2 の潜時順 |
N 1の振幅順 |
P2 の振幅順 |
|
|
|
choi01 |
a<i<u |
a>i>u |
u>a>i |
||
|
choi10 |
i<a<u |
a>i>u |
u>i>a |
||
|
林 01 |
i<a<u |
a<i<u |
u>a>i |
i>a=u |
|
|
林 10 |
a<i=u |
u>i>a |
i>u>a |
||
|
gan01 |
i<a<u |
i<a<u |
i>a=u |
a>i |
|
|
gan10 |
a=u<i |
i<a<u |
i>a=u |
i>a>u |
|
|
岩井 01 |
a<i<u |
i=a=u |
i>u>a |
a>u>i |
|
|
岩井 10 |
a=i=u |
a<i<u |
i>u>a |
a>i>u |
|
N1の潜時の順について:10、01にかかわりなく大まかには[a]<[u],[i]<[u]の順であるということが言えそうである。
P2の潜時の順について:N1の潜時順と同じく[a]<[u],[i]<[u]といえるようである。
P2の潜時のデータは全5例であり、N1の潜時に比べ数が少ないのが難点ではあるが、N1とP2の潜時関係がともに[a]<[u],[i]<[u]と、等しい結果になったことからこの結果の信頼度が高まったといえる。なぜならN1の潜時が短ければその後のピークの潜時も比例して短いのが通常であるからである。
N1の振幅の順について:振幅の順については[i]>[a],[i]>[u]ということができそうである。
P2の振幅の順について:被験者すべてに共通する傾向のようなものは見つけ出せなかった。
その他全体にかかわる考察:
N1の振幅はほかのものと異なりプロソディーの違いによる順序の入れ替わりがほとんどないことが注目される。被験者ごとの
[a][i][u]の振幅の順が01、10に共通しているのである。hayashiのみ01と10で[a][i]の順が入れ替わっているが解析画面を見るとわかるように[a]と[i]の振幅の差はわずかであり大きく入れ替わっているわけではないといえる。先に見た潜時が
01と10とで大きく順序の入れ替えがあったのと対照的である。P2ではこの傾向はやや崩れるのであるが、振幅は潜時に比べプロソディーの影響を受けにくいといえるのではないだろうか。
実験
33母音に意味を結び付けて提示する。結びつける意味は1.2.3で共感覚(synethetic)的音象徴としてあげたものの中から「大きさ」に関するものを取り上げた。
これは
[a],[i],[u] の3母音で十分カバーできる意味領域であり、どんな母語の被験者にとっても意味内容が単純で理解しやすく、Sapir(1928)などでこれまでにも取り上げられていることから結果の比較が容易であると考えたからである。また実験1、実験2と異なり提示の方法もodd-ball法を用いた。意味を考える上で比較対象があるほうが認識されやすいと考えたためである。
一回の実験で行う脳電位の測定は以下の
6セットである。[a](odd) [i](normal)
[a](odd) [u](normal)
[i](odd) [a](normal)
[i](odd) [u](normal)
[u](odd) [i](normal)
[u](odd) [a](normal) odd(
標的刺激) normal(非標的刺激) 順不同odd
とnormalの比率 2:3odd
の加算回数 30〜40回名前:高田
年齢:
22性別:女
利き手:右
言語形成期に住んだ場所:福井県丹生郡朝日町(日本)
母語:日本語
大
:/a/ 中:/i/ 小:/u/実験日:
98.7.6 (10:25-11:15)名前:
呉 (Oh Eunkyong)年齢:
22性別:女
利き手:右
言語形成期に住んだ場所:全州(大韓民国)
母語:韓国語
大
:/a/ 中:/u/ 小:/i/実験日:
1998.6.19 (14:15-15:00)名前:山崎
年齢:
22性別:女
利き手:右
言語形成期に住んだ場所:香川県高松市(日本)
母語:日本語
大
:/a/ 中:/i/ 小:/u/実験日:
1998.6.17 (14:00-15:00)名前:大西
年齢:
(1回目)19 (2回目)20性別:女
利き手:右
言語形成期に住んだ場所:香川県観音寺市(日本)
母語:日本語
一回目 大
:/a/ 中:/u/ 小:/i/二回目 大
:/a/ 中:/i/ 小:/u/実験日:
(一回目)1998.6.16 (16:40-18:20)(
二回目)1998.9.14 (12:15-13:30)実験
2と同じくN1とP2の振幅、潜時についてみたところ、振幅は実験2と異なり電位の大小関係がチャンネルによって異なることが多いことがわかった。次表にはチャンネルの情報も加えている。また、潜時はN1、P2とも背景音の違いに影響を受けないことが解析画面から見てあきらかである。よって次表では省略した。背景音が異なるだけの同じ標的音の分析であるため、実験2よりも波形の差が小さく、振幅の大小を決定するのが難しくなっている。
|
A/I>A/U |
A/U>A/I |
A/I=A/U |
I/A>I/U |
I/U>I/A |
I/A=I/U |
U/A>U/I |
U/I>U/A |
U/A=U/I |
|
|
高田 N1 |
F3C3Fz |
F4C4Cz |
- |
F4C4Cz |
F3C3Fz |
- |
F4C4Cz |
F3C3Fz |
- |
|
高田 P2 |
C3C4FzCz |
F3F4 |
- |
Fz |
F3F4C3C4Cz |
- |
F3F4C3Fz |
C4Cz |
- |
|
ohN1 |
全 CH |
- |
- |
- |
- |
全 CH |
全 CH |
- |
- |
|
ohP2 |
C4FzCz |
F3F4C3 |
- |
C4FzCz |
F3F4C3 |
- |
全 CH |
- |
- |
|
山崎 N1 |
F4C4Cz |
F3C3Fz |
- |
全 CH |
- |
- |
F3F4C4Cz |
C3Fz |
- |
|
山崎 P2 |
F3C3Fz |
F4C4Cz |
- |
C4Fz |
F3F4C3Cz |
- |
- |
全 CH |
- |
|
大西 1N1 |
F4C3C4 |
- |
- |
Cz |
F3F4C3C4 |
- |
- |
F3F4C3C4 |
Cz |
|
大西 1P2 |
F3C3Cz |
F4C4 |
- |
F3C3 |
F4C4Cz |
- |
全 CH |
- |
- |
|
大西 2N1 |
C4Cz |
F3C3Fz |
F4 |
全 CH |
- |
- |
全 CH |
- |
- |
|
大西 2P2 |
- |
全 CH |
- |
F3C3C4FzCz |
- |
F4 |
C3C4FzCz |
F3F4 |
- |
表を見ると、高田・
Ohは頭部の前後で、山崎・大西1は頭部の左右で振幅の大小関係が逆転していることがわかる。(電極配置図参照)これは脳内の反応に関連があるのかもしれないが、現段階ではわからない。
また、いくつか安静時電位が多いデータがある。
Ohの全データと、山崎のU/A、U/Iである。大西のデータはP2の後、陰性波のたちあがりが小さい点が気になるが、大西1、大西2と二回分とも同様であることから、測定時のミスというよりむしろ大西個人の特徴と考えるのが適当であると思う。この実験結果の解析にあたり、対照的な意味の音を背景音に持つときのほうがそうでないときよりも振幅が大きくなるという仮説を立てた。つまり大が
[a]、中が[u]、小が[i]というイメージを持つ被験者の場合はA/UよりA/Iのほうが振幅が大きくなるというものである。しかしこの仮説を裏付ける結果は得られず、背景音の違いによるイメージと振幅の関係は見出すことができなかった。この実験からわかったことは背景音の違いは潜時へは影響せず、振幅に関して部位ごとに異なる影響を与えるようだということである。
おわりに
本研究は音象徴を脳生理学から見る先鞭をつけたと思う。まったく手探りで、試行錯誤を繰り返しながらの実験であったが、音象徴を科学的に見るには脳電位の解析が有効な方法であることは確信した。もっといろいろな実験パラダイムで、多様な被験者を集めた実験がしたかった。被験者の母語によってもっとはっきりとした違いが出るかと予想したのだが、本実験では母語による違いは見られず、また違いがあったとしてもそれを抽出できるだけの被験者数がなかったことが残念である。音と意味の関連を探るということで、脳電位に関しても意味情報を反映するといわれる
P3以降、P300などを見ていきたかったのだが、刺激音が無意味音であるためかP300らしき電位は発見できず、N1とP2のみを見る以外になかったことも予想外であった。P300の研究は脳生理学や心理学の面で進められているが、刺激として用いるのは有意の音声や映像、有意の文字であり、本実験のような無意味の単音からP300の反応を見るというのは難しいようである。実験、解析の困難は多々あったが、手探りならではの面白さ、新しい事をする楽しみに満ちた研究であり、私の好奇心を刺激する研究であったことに満足する。