単行本 1989.9.毎日新聞社 文庫 1992.10.文春文庫
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「処女性ってのは、精神のことなんだ。女の肉体ってのは、そのまま精神なんだ。」
私はこの作品「海岸列車」を読んで、自分の体をむやみに投げ出したいという衝動から逃れました。インターネットでいくらでも、匿名の自分と相手を探せる世の中、ちょっとしたはずみさえあればいくらでも、そうなってしまうことはできるのです。
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中学生のころの友人に、結婚を知らせるはがきを送ったあとの返事。
2枚の便箋で順調な近況を知らせてくれる中に「不倫もしてるし。」、と。その数年後に、娘が生まれたことを知らせたはがきは、あて先不明で戻ってきたまま。中学生の3年間、もっとも好きだった彼女とはもう会えないのだろうと思う。私は、彼女の手紙を汚いと思って、でも、そういう手紙を書いた彼女のことをくりかえしくりかえし考えている。
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「かおり」を育ててくれた叔父がくりかえし、くりかえし言うのです。
妻子のある男性と深い関係になるようなことは、女の心に傷を刻むのだと。男と女は違うのだと。男の性と女の性とで、何が違うのか。
体の関係に執着してしまうのは、女なのだと、どうしても思います。関係を持ったら、自分を好きになってくれるのが当然だと思う。体の関係が、心の問題をすべて解決してくれるように思う。どんな争いであっても、そのまま抱かれてしまえば、もう解決してしまう。どんなに言葉と態度を尽くして愛情を示されても、SEXがなければ本当だとは思えない。
肉体と精神は人間の外見と中身。同じものを外から見ると体、中から見ると心。
女が体を提しながら、心の尊厳を保つのは難しいことだ。きっと私にはできない。
だから、暗い衝動に身を任せる事のないように。
心を守ろうとするより、体を守ることのほうが易しいから。
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(2005.1.21)